2025.04.21旅行・チケット業界の不正を防ぐには
- #決済不正
- #不正対策ノウハウ
本記事は、Sift Science, Inc.のBlog記事「How to Prevent Travel and Ticketing Fraud」を日本語に翻訳したものです。
本記事の著作権は、Sift Science, Inc.および同社の国内パートナーである株式会社DGビジネステクノロジーに帰属します。
Sift Trust and Safety Team 著 / 2025年2月10日
オンライン旅行プラットフォーム市場は2032年までに1.3兆ドル規模に達すると予測されており、旅行・チケット業界は不正の格好の標的となっています。2023年には、この業界における取引の36%以上が不正の疑いありと判定されており、世界的に見ても最も悪用されやすい業種のひとつになっています。
TransUnionの「2024年オムニチャネル不正レポート」によると、新規に作成される旅行関連アカウントのうち約7件に1件が不正の可能性があるとされています。旅行・交通業界における不正は、深刻な金銭的損失をもたらすだけでなく、顧客からの信頼を損ない、業務の混乱、セキュリティ対策に伴う運用コストの増加、さらにはデータ漏えいや不正行為による企業のブランド毀損といった深刻な影響を及ぼします。
こうしたリスクから自社を守るには、よくある旅行・チケット不正の手口を理解し、最新の不正検知テクノロジーを導入するとともに、「信頼できるアイデンティティ（Identity Trust）」に基づいた判断を行うことが不可欠です。
本記事では、旅行・チケット業界で発生する主な不正の種類やその仕組みを紹介し、顧客とビジネスを守るための具体的な対策をご案内します。
旅行・チケット業界における不正とは？
旅行・チケット不正とは、旅行・ホスピタリティ業界において、金銭的利益を目的として個人や企業をだます行為のことです。
その手口には、架空予約、決済不正、ロイヤルティプログラムの不正利用、チケット転売スキームなどが含まれ、オンラインプラットフォームの脆弱性を突いて、航空会社、ホテル、ライドシェア、旅行代理店などの事業者から、不正に無料サービスや返金、ポイント等を得ようとするものです。
リスクにさらされる業種は、航空会社、宿泊施設、バケーションレンタル、観光業など、オンラインで予約を受け付けているすべての旅行・ホスピタリティ関連企業です。これらの企業は、不正により未払いのサービス提供による収益損失を被るほか、正規顧客に対しても、厳しい認証や制限が課されるなどの不便が生じ、顧客体験の悪化にもつながります。
業界でよく見られる不正の種類
旅行業界では、取引量の多さやシーズンごとの需要急増により、オンライン不正の発生率が非常に高くなっています。こうした環境は、不正犯にとって格好の標的となっており、より高度で巧妙な攻撃を招きやすい状況にあります。以下は、業界でよく見られる代表的な不正の種類です。
- ロイヤルティプログラムの不正利用
偽アカウントの作成やボットを使ったポイント獲得、不正なルール操作などによって、報酬を不正に取得する行為です。たとえば、獲得したポイントを私的に使用したり、盗んだポイントを販売したり、制度の抜け穴を利用して無料のサービスや商品を入手する――といった手口が該当します。
- 決済不正
盗まれたカード情報などを使って不正に購入を行う行為です。このような不正取引が発覚すると、正規のカード所有者によるチャージバック（返金要求）が発生し、事業者はその分の損失を負うことになります。
- アカウント乗っ取り（ATO）
フィッシングや認証情報の窃取により、第三者が正規ユーザーのアカウントにアクセスし、保有していたポイントやトラベルクレジット（旅行用クレジット）を使い切ってしまう行為。正規のユーザーが異常に気づく前に、不正利用が完了してしまうことが多くあります。
- キャッシュアウト詐欺
不正に入手したアカウントや支払い手段を使って、旅行サービスやチケットを取得し、それを転売または換金することで利益を得る手口。バウチャーの売却や再販も含まれる場合があります。
- 直前予約を狙った詐欺
出発の24〜48時間前に不正な支払い手段で予約を行い、発覚前にサービスを利用する手口。出発までの時間が短いため、カード所有者や事業者が異常を検知・対応する前に、不正者がサービスを利用してしまうリスクが高くなります。
- 偽の旅行サイト
正規の旅行代理店や会社を装ったウェブサイトやSNSアカウントで、格安チケットを販売する詐欺。正規企業とは無関係でも、消費者の信頼を損ね、ブランドの信頼を損なう原因になります。
- 不正な予約の転売
盗まれたクレジットカード情報で予約した旅行サービスを、割安価格で第三者に転売する行為。購入者はフライト当日に予約が無効になっていることを知り、被害に遭います。
不正が業界にもたらす影響
オンライン予約の普及に伴い、旅行・チケット業界が抱える脆弱性も増加しています。不正が企業にもたらす主な影響を紹介します。
- 高い返金率・チャージバック率
一部の利用者は柔軟な返金ポリシーを悪用し、サービス利用後に返金請求を行う「ファーストパーティ不正」を仕掛けてきます。これにより本来得られるはずだった収益を失い、不要な返金処理コストを負担することになります。
- 在庫管理の混乱
虚偽の予約、ノーショー（無断キャンセル）、オーバーブッキング、不正による直前キャンセルが続くことで、需要予測が狂い、空室・空席のロスを生み出します。その結果、売上機会の損失が発生し、運営の効率も低下します。
- ロイヤルティプログラムの脆弱性
顧客維持を目的としたプログラムが、アカウント乗っ取りやリワードポイントの不正利用といった手口の対象になりやすく、不正者に悪用されることで、本来の目的である顧客満足の維持が難しくなります。
- 国境を越える複雑な不正
旅行は国際取引が多いため、国ごとの法律や規制の違いを突いた「越境不正」も発生しやすくなっています。不正犯は法制度のギャップや捜査の手が及びにくいエリアを利用し、不正行為の発覚や摘発を逃れようとします。
旅行・チケット不正の検知と防止方法
旅行・チケット業界における不正を防ぐには、不正犯の手口を理解し、効果的な戦略とツールを導入することが不可欠です。以下に、リスクを最小化するための具体的なステップを紹介します。
- 予約行動の分析
同一便への大量購入や複数のクレジットカードを使った予約など、異常なパターンを検出するツールを活用しましょう。
- 位置情報の照合
高額取引や直前予約の際には、IPアドレスと請求先住所を突き合わせることで、地理的な不一致を検出し、不正の兆候を見つけることができます。
- ロイヤルティプログラムの保護
アカウント内のポイントが急に移動したり、不正な特典交換が行われたりしていないかを監視します。また、多要素認証（MFA）などのセキュリティ対策を導入することで、アカウント乗っ取りのリスクを軽減できます。
- チャージバック対策
返金・キャンセルポリシーを明確にし、不当なチャージバック請求から自社を守りましょう。
- リスクの高い地域の監視
不正が多発している地域への予約や、片道航空券など不正利用されやすい取引には特に注意を払い、フラグや強化チェックの対象とするようにしましょう。
Sift が旅行・チケット不正をどう防ぐか
オンライン予約やモバイル決済の利便性が向上する一方で、不正も進化しています。不正犯たちは、偽の予約、決済不正、ロイヤルティプログラムの悪用といった手口で、デジタル化の隙を突いてきます。
Sift は以下のような高度な機能によって、旅行・チケット業界の不正を防止します。
- リアルタイムの不正検知
Sift のグローバルデータネットワークは年間1兆件以上のイベントを処理し、予約・決済・IPパターンにおける異常を即時に検出。誤検知を抑えつつ迅速な対応を実現します。
- 動的なリスクスコアリング
すべての取引に対してリスクスコアを付与し、盗難カードによるチケットの大量購入など、疑わしい行動を即座に特定・ブロック。
- アカウント乗っ取り対策
デバイスフィンガープリンティングや行動分析によって、不正アクセスやポイント不正使用を検出し、顧客の信頼を守ります。
- 決済不正の防止
決済不正を根本から防ぎ、業務の自動化・損失削減・成長支援を同時に実現します。
- 業界横断の知見を活用
Sift のグローバルデータネットワークを通じて得られるリアルタイムのインサイトは、旅行・チケット業界特有の傾向も自動で学習し、対応します。
- カスタマイズ可能なルールとワークフロー
たとえば、ハイリスク地域への片道予約や、直前のホテル予約といった特定の状況に応じて、ワークフローを柔軟に設計・適用できます。
- スケーラビリティと適応性
Sift の AI 主導型ソリューションは、不正の進化に応じて常にアップデートされ、ビジネスの拡大や新地域への進出にもスムーズに対応します。
自社に最適な不正検知ソリューションを見つけたい方は、Sift の「オンライン不正対策評価ガイド」もぜひご覧ください。自社のニーズに合ったソリューション選びに役立つ包括的な評価ツールが手に入ります。
