本記事は、Sift Science, Inc.のBlog記事「Addressing Innovation: A Build-Versus-Buy Model for Payment Protection」を日本語に翻訳したものです。
本記事の著作権は、Sift Science, Inc.および同社の国内パートナーである株式会社DGビジネステクノロジーに帰属します。
Sift Trust and Safety Team 著 / 2025年5月23日

急成長するプラットフォームは、常に決済不正の脅威に直面しています。MasterCardの調査によれば、2024年から2027年にかけて、世界のオンライン決済不正による損失額は3,430億ドルを超える見通しです。不正なチャージバックや誤った取引拒否が発生すれば、収益を悪化させ、、顧客の信頼も失われます。この脅威に対処するために、製品およびエンジニアのリーダーは、「自社で不正対策プラットフォームを構築すべきか、それともSiftのようなサードパーティソリューションを導入すべきか?」という重要な選択を迫られます。
企業には、決済保護のために「内製か外部導入か」という判断を行うにあたり、戦略的な視点と技術的な知見を兼ね備えた評価フレームワークが必要です。
決済不正の規模と複雑性
決済不正は複雑化し、常に進化を続けており、不正犯は、あらゆる弱点を突こうとします。例えば、盗難カードで注文し、不当に割引されたサービスや商品を転売する手口も見受けられます。こうした不正が発覚すると、プラットフォームは被害者への返金やチャージバック手数料の負担を強いられます。
多くの企業は初期段階では、「手動による目視検査」と「単純なルール」の対策からはじめますが、こうした方法では巧妙な攻撃手法に対応できません。ルールベースのシステムは、継続的なアップデートが必要であり、貴重な時間とリソースを費やしてしまいます。こうした努力にもかかわらず、損失は急速にあっという間に拡大し、事業の成長とともに不正被害も拡大し、収益性や信頼性を短期間で脅かす存在になり得るのです。
進化する不正手口に先手を打つ
巧妙な不正グループは、防御をすり抜けるために高度なテクノロジーを駆使します。中には、機械学習を利用して、企業側の不正対策を分析・回避しようとする事例も出てきています。防御側の対応が遅ければ、、すぐにその隙を突いてきます。、だからこそ、企業はスピード感と柔軟性をもって、不正対策のイノベーションを維持する必要があります。
機械学習は、表面的には見えにくい新たな不正パターンを検知できるため、現代の不正対策における要となっています。例えば、SiftのAI搭載モデルは、ユーザーの行動や新たな脅威情報をリアルタイムでネットワーク全体から収集し、瞬時に更新しています。こうした専用システムであれば、新たな不正の兆候を即座に検知できますが、内製ツールでは、常に更新を行わなければ、対応が送れてしまう可能性があります。
不正犯がAIや新たな手法を取り入れている今、「火には火をもって対抗する」、つまり先進技術を同等に利用する必要があります。イノベーションと俊敏さは不可欠ですが、これを社内だけで担うには多大なリソースと専門性が求められます。不正対策が自社の中核事業か、もしくは新たな収益源となる場合を除く、一般的なインハウス開発では限界も見えてきます。
内製の現実:リソース、人材、総所有コスト
本格的な不正対策プラットフォームの内製開発には、多層的な技術と専門知識が求められる、大規模な投資が必要です。データの取り込み、機械学習モデル、ルールエンジン、分析ツール、レポートダッシュボードなど、多層的なテクノロジーを連携する必要があります。

それぞれの領域に、専門人材が必要です。
- 大量のイベントデータを取得・正規化するデータエンジニア
- 機械学習モデルを開発・トレーニングするデータサイエンティスト
- ルールの設計やイレギュラーケースの評価を行う不正アナリスト
- システムの安定稼働やセキュリティ、コンプライアンスを担保するインフラエンジニア
初期構築後も、継続的なメンテナンスとアップデートが絶え間なく発生します。不正パターンは日々変化し、モデルの再学習が必要となり、新しいエッジケースが絶えず発生するためです。これらすべての対応のために、時間と人材の長期的な投入が必要になります。
ここで重要になるのが、「総所有コスト(TCO)」です。一見すると、内製化は費用対効果が高いように見えますが、実際には以下のコストも発生します。
- 初期開発コスト(エンジニア工数、インフラ、開発ツール等)
- 専門人材の採用または再配置(データサイエンス、不正分析、DevOps)
- 新たな不正手口に対応するための継続的なメンテナンスとアップグレード
- システムエラーやモデル劣化によるダウンタイム・収益損失のリスク顧客増加に伴うコンプライアンスやデータガバナンス対応
また、目に見えない「機会損失」も重大なポイントです。不正対策に人材を投入するということは、本来のコアプロダクトの競争力強化に使えるリソースが減ります。システムのパフォーマンスや機敏性が不足した場合、誤検知、チャージバック、顧客損失といった下流コストが、初期コストの節約効果をはるかに上回る可能性があります。
さらに、内製の不正対策システムは、事業成長にあわせて進化し続ける必要があるということです。初期段階ではうまく機能していたとしても、取引量が急増するとスケーラビリティの問題に直面することがあります。また、自社開発ツールでは、優良顧客に過度の負担をかけたり、不正を十分に阻止できないケースもあります。内製で設計したルールが厳格になりすぎたり、高負荷時にシステムダウンすることで、重要な局面で取引拒否の誤判定や機会損失につながる可能性があるのです。こうした課題を踏まえると、「自社だけで」不正対策を実施しようとする企業は、予想外に高額な総コストと、継続的かつ多大なリソース投入を前提とした戦いに臨む覚悟が必要です。
もしリスク対策チームが、自社内に十分な人材が不足しており、堅牢な不正対策ツールを開発することが難しいと気づいた場合、限られたエンジニアリソースを数年がかりで開発に割くのは、さらに厳しい選択となります。こうした状況では、不正対策専門のプロバイダーと提携することが、明確な代替策となるのです。
専用ソリューションを活用するメリット
Siftのようなサードパーティの不正対策ソリューションを導入することで、企業は不正への対応力を加速させることができます。サードパーティプロバイダーは、一般の企業では何度もの開発サイクルを要するような、専門知識とテクノロジーをすぐに提供します。例えば、 Siftの「Payment Protection」は、実際の現場で鍛えられた機械学習モデルと、世界中で数兆件ものイベントを処理する、比類のないデータネットワークを備えています。
Siftのようなソリューションが持つ大きな強みのひとつは、データのネットワーク効果です。Siftは、様々な業界の数百社もの顧客と連携し、機械学習に膨大な種類の不正パターンを学習させています。このグローバル規模の不正データプールによって生まれるネットワークインテリジェンスは、単一企業では到底実現できません。Siftの顧客ネットワークから得られる集合的なデータは、コミュニティを守るための集合知として機能しています。
さらに、サードパーティプロバイダーは経験と専門性を備えています。不正対策そのものがプロバイダーの中核事業であるため、ツールの有効性を維持するために多大な投資を行っています。例えば、Siftは年間約1兆件のイベントを処理しており、これによりSiftの機械学習モデルは多種多様な不正シナリオを経験しています。このモデルは、不正対策の専門チームによって継続的に更新されています。Siftを利用する顧客にとっては、自社のエンジニアリソースを割かずとも、常に進化を続ける不正対策ツールを活用できる、ということを意味します。
また、導入面でも現実的な時間と効率のメリットもあります。クラウドベースの不正対策APIであれば、導入は数年ではなく数週間で完了します。Siftを導入した顧客は、短期間で目に見える成果が得られました。Siftとの提携により、1日あたり数千ドル規模の不正を防止し、さらにリスク管理チームの審査効率を2~3倍向上させることができました。つまり、「外部調達」を選ぶ=Siftを導入することで、すぐにコストと時間を節約できたのです。
Siftのプラットフォームは高い拡張性を備えているため、取引量が増えても、不正対策が追いつかなくなる心配がありません。取引量の急増や新たな不正パターンにも自動的に対応するため、リスク管理チームは「後追い対応」から開放され、Siftの管理コンソールやアナリティクスを活用し、戦略やポリシーの最適化など本質的な業務に集中できるようになりました。
不正対策をアウトソースすることで、企業は本来のミッションに専念できるようになります。ある不正対策ソリューションプロバイダーは、自社開発はすべてをコントロールできるが、外部委託することで”事業運営と成長に集中できる自由”」が得られる」と語っています。急成長中のソフトウェア企業にとって、不正検知という重い重責をSiftのような信頼できるパートナーに委託することで、自社のプロダクト開発やエンジニアチームは差別化に集中しつつ、世界最高水準の不正対策体制も同時に維持できるのです。
もちろん、どんなに優れた専用ソリューションであっても、最高レベルのパフォーマンスを発揮するには、密接で協調的なパートナーシップが不可欠です。不正対策プラットフォームの真価は、取り込まれるシグナルの質と自社ビジネスへの理解度によって決まります。つまり、ベンダーと密に連携し、フィードバックやコンテキストシグナル、関連データを提供し、自社固有の環境に合わせてモデルを最適化することが重要です。自社独自の業務プロセスと不正の傾向をモデル学習に組み込むことで、システムはより賢く、よりスピーディになります。このフィードバックループは、自社のリスクプロファイルやユーザー行動への適応に不可欠です。能動的かつ双方向の関係を築くことで、プラットフォームを自社のニーズとともに進化させ、変化する脅威環境にも遅れず、対応する鍵となります。
決済保護における最適な選択肢
決済不正対策は、戦略的な先見性と高度な技術力の両方が求められる、ミッションクリティカルな機能です。内製で構築するべきか、Siftのような専門プロバイダから導入するべきかは、最終的には自社の目標や技術力、またイノベーションへの意欲と合致するかどうかにかかっています。万能の正解はありませんが、成功パターンは明確に存在します。
不正対策が自社の主要な差別化要因であり、独自の要件や、長期的かつ継続的なプロジェクトに投資できるリソースがある場合、内製開発は理にかなっていると言えるでしょう。この場合、完全なコントロールを得られますが、すべての責任も自社が負うことになります。。一方で、成長段階にある多くのソフトウェア企業にとって、外部調達モデルに大きなメリットがあります。世界クラスのテクノロジーと専門知識への即時アクセス、迅速な導入、そして不正行為者の巧妙な手口に対抗できる不正体制を維持することができます。
企業がこのような判断を下す際には、総所有コスト(TCO)を考慮する必要があります。このコストには、見落としがちな不正の見逃しによる損失や、リソースが別業務に投入される機会損失、そして機敏性とイノベーションを社内で維持し続けるための長期的な負担が含まれます。適切な不正対策の戦略を選ぶことで、財務的損失を防ぐだけでなく、不正リスクと顧客体験の両方が安心できる状態で、自信を持って事業成長を目指すことができます。
オンライン決済不正に対抗する上で、イノベーションと機敏性は不可欠です。企業は常に不正者の一歩先を行く必要があります。自社開発であれ、外部調達であれ、目標は同じです。顧客と収益を守り、快適な顧客体験を提供し、持続可能でストレスのない成長を実現することです。
