2025.05.14【不正トレンドレポート】拡大する“不正決済”──誰もが不正に手を染める時代、その実態とは?

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Sift不正トレンドレポート「不正決済の現在地」

EC市場の成長や決済手段の多様化が進むなか、不正決済のリスクがこれまで以上に複雑化・高度化しています。

従来は専門的なスキルを持った一部の犯罪者によって行われていた不正も、今や「お小遣い稼ぎ感覚」で一般ユーザーが加担する時代に。また、後払い(BNPL)やデジタルウォレットなど、新たな決済手段を狙った不正・詐欺も拡大しつつあります。

この記事は、AIを活用した不正検知サービスを提供するSift Science, Inc.が発行する最新レポート「Q1 2025 Digital Trust Index: Payment Fraud in the New Age of Digital Transformation」を日本語翻訳したホワイトペーパー『不正決済の現在地──デジタル変革期におけるリスクと対策とは』をもとに執筆しています。

本記事ではその内容から一部を抜粋してご紹介します。
レポートの完全版は、ページ下部のバナーより無料でダウンロードいただけます。

不正決済被害の現実 ─ 約半数の消費者が経験あり

Siftの調査によると、回答者の約半数(44%)が人生で一度は不正決済の被害に遭ったことがあると答えています。さらに約20%は2回以上の被害を経験しており、中には複数サイトで決済情報を悪用されたケースも見られました。

被害の多くはECサイトでの不正利用によるもので、チャージバックや意図しない決済などのトラブルが多数発生しています。

こうした現実は、単なるセキュリティの問題にとどまらず、ユーザーの信頼を大きく揺るがすリスクでもあります。実際、被害を受けた消費者の多くが「そのサイトでの購入をやめた」と回答しており、不正決済は経済的損失+顧客離脱の要因になり得る深刻な経営課題といえるでしょう。

不正決済被害の現実:約半数の消費者が経験あり

誰でも不正に“参加できる”時代──不正の民主化が進行中

これまで不正や詐欺は限られたスキルを持つ攻撃者の専売特許でしたが、SNSやメッセージアプリ上では「盗まれたクレジットカード情報の販売」や「不正行為の手口の紹介」など、不正行為を“稼げる副業”のように共有・勧誘する投稿が急増しています。

Siftの調査では、

  • 34%の消費者が不正への参加を呼びかける投稿を見たことがある
  • 23%が不正に関与した、または関与した人物を知っている

と回答しており、不正がもはや特別なものではないことが明らかになりました。

お小遣い稼ぎ感覚で一般人が不正に加担する時代

世代間の意識と行動が浮き彫りにする“セキュリティインサイト”

Siftの調査によれば、世代ごとに決済手段や不正への意識には明確な差が存在します。

たとえば、

  • ベビーブーマー世代やX世代は、クレジットカードを中心とした“信頼ある”決済手段を重視し、不正に対して慎重な姿勢を保っています。
  • 一方で、ミレニアル世代やZ世代は、後払い(BNPL)やデジタルウォレット、暗号資産といった代替決済手段を積極的に利用し、利便性を優先する傾向が顕著です。

さらに注目すべきは、不正被害を受けた後の対応にもギャップがあること。
若年層では「不正を経験しても、同じECサイトを使い続ける」という割合が高く、被害そのものよりも“利便性”を優先してしまう行動傾向が見られました。

また、SNSや掲示板、メッセージアプリなどを通じた不正情報への接触率も高く、“正規ユーザーと不正加担者の境界が曖昧化しつつある”ことが、Z世代を中心に浮き彫りになっています。

このような世代間のギャップは、単なる決済手段の選好にとどまらず、セキュリティリスクに対する「感度の差」や「行動様式の違い」として、企業にとって見逃せないインサイトとなっています。

世代で違う行動と意識のギャップ

不正決済を「構造的に捉える」時代へ──企業に求められる視点とは

本レポートでは、ここまで紹介したような不正決済の実態・行動傾向の変化・決済手段ごとのリスクに加え、ユーザーの信頼度を軸にしたSift独自の不正検知フレームワーク「Identity Trust XD」についても解説しています。

不正が“誰でも参加できる経済圏(fraud-as-a-service)”として拡大する中、企業がすべきは単発の攻撃を防ぐことではなく、ユーザー行動を多面的に捉える「構造的な対策」へのシフトです。

本レポートは米国を中心としたデータをもとに構成された内容ですが、日本のEC・オンライン事業者がこれから直面するであろう課題を先取りできる内容となっています。

不正対策を担うセキュリティ担当者の方はもちろん、「ユーザーとの信頼関係」を維持しながらビジネスを伸ばしたいEC責任者にも、ぜひ一読いただきたい内容です。