本記事は、Sift Science, Inc.のBlog記事「The “Refund Hack” Economy: Why E-Commerce Chargebacks Surged in 2025」を日本語に翻訳したものです。
本記事の著作権は、Sift Science, Inc.および同社の国内パートナーである株式会社DGビジネステクノロジーに帰属します。
Sift Trust and Safety Team 著 / 2025年12月11日

重要なホリデーショッピングのシーズンを迎える中、企業は「ファーストパーティ不正」という新たな課題に直面しています。Siftが発表した2025年第4四半期デジタルトラスト指数によると、チャージバック率は2025年を通して着実に上昇し、第3四半期には0.26%に到達しました。これは、第1四半期から53%の増加にあたります。特に、小売のEコマース分野では、チャージバック率が2025年第1四半期から233%増と急激に拡大しており、すべての業種の中で最も高い増加率を記録しています。
この急増の背景にあるのが、SNS上で広がる「返金ハック」のチュートリアルです。Siftが実施した調査では、22%の消費者がSNS上でこうしたチュートリアルを目にしたことがあると回答しています。中でも、TikTok(34%)とFacebook(29%)が主な拡散チャネルとなっています。さらに懸念すべき点として、10%の消費者が「実際にこれらの手法を試したことがある」と認めています。具体的には、着用済みの衣類を返品したり、実際には商品を受け取り満足していながらもチャージバックを申請したりする行為が挙げられます。
なぜ今、「最悪の条件」が重なっているのか
このチャージバック危機の背景には、複数の要因が同時に重なっています。第一の要因は、カード非対面取引(CNP)の拡大です。現在、CNP取引は加盟店取引全体の63%を占めており、チャージバック紛争が発生する機会が増加しています。デジタルコマースが拡大し続ける中、取引量そのものが増加し、正当なチャージバックと不正なチャージバックの双方が発生しやすい環境となっています。
第二の要因として、経済的な圧力が消費者を安易でグレーな行動へと駆り立てている点が挙げられます。Siftの調査では、5人に1人の消費者が、経済的に厳しい状況では「返金ハック」を使う可能性が高いと回答しています。この状況に、”SNSを通じた不正手法の民主化”が重なることで、「返金ハック経済圏」と呼ばれる環境が生まれます。この環境では、不正に関する知識が自由に共有され、次第に当たり前のものとして受け入れられています。
最も大きな打撃を受けた「ファッション業界」
2025年、特にファッションおよび小売業界は大きな脆弱性を抱えていました。チャージバックの対象として最も多かったのは、衣料品・アクセサリー・化粧品で、全体の20%を占めています。これにデジタルサブスクリプション(18%)、家庭用品(16%)が続きました。「ファーストパーティ不正を行った」と認めた人のうち、19%が衣料品カテゴリを標的にしていたという結果も出ています。
こうした不正なチャージバックを消費者が正当化する理由から、この問題の根深さが見えてきます。18%の人は「注文が予定通りに届かなかったから」として、虚偽の請求を正当化。17%は「販売業者の対応が不誠実だった」と感じたため、チャージバックは妥当だと考えました。12%は「返金を希望していただけ」であり、「クレジットカード会社が肩代わりしてくれると分かっていたから」と回答しています。
「チャージバックと紛争が増加し、ファーストパーティ不正がその大半を占めるようになる中、企業は運用面・経済面の両方で、ますます大きな負担を抱えることになります」と、SiftのTrust & Safetyアーキテクトであるアレクサンダー・ホール氏は述べています。「積極的な不正対策と、効率化されたチャージバック対応を組み合わせることで、企業は損失を抑え、収益を守り、顧客との信頼関係を長期的に維持することができます」。
波及効果
「返金ハック経済圏」の影響は、単なる金銭的な損失にとどまりません。アメリカの加盟店は、1ドルのチャージバックに対して約4.61ドルの損失を被っているとされており、運用上の負担が非常に大きくなっています。しかし、ブランドの信用失墜による影響はさらに深刻です。不正被害を経験した消費者の62%が「そのブランドでの買い物を控える、または完全にやめる」と回答しており、21%は「完全にやめる」と述べています。
これにより、悪循環が生じます。不正を理由にチャージバックを申請した消費者の24%が、その後も別のオンライン不正の被害に遭っており、このことは”盗まれた決済情報が迅速に無効化されなかった”ことを示唆しています。その結果として、決済不正(52%)、詐欺行為(51%)、アカウント乗っ取り(29%)などの被害が発生しています。
加盟店が取るべき対策
ファーストパーティ不正が一般化する中で、加盟店には多層的な対応が求められます。まず、決済承認前に不正の可能性を検知するためのリアルタイム取引分析が必要になります。次に、勝算のあるケースを優先的に処理するための自動化された紛争管理、誤解によるチャージバックを防ぐための明確なカスタマーコミュニケーション、そして、争うコストが取引金額を上回るようなグレーゾーンのケースには、積極的な返金対応も有効です。
加盟店は今後のホリデーシーズンで、正当な紛争の発生を未然に防ぐために警戒し、顧客体験に再注力する必要があります。
紛争とチャージバックに関する詳しい分析については、「2025年第4四半期の Digital Trust Index レポート」を参照ください。
